10年後の姿を、5つの型から選ぶ kogei_ai 2026年9月3日

10年後の姿を、5つの型から選ぶ

やるべきことは、いくつも思い当たる。ただ、どれから手をつけるかが決まらない。産地の皆さまから、こうしたお話をよく伺います。課題を並べ直しても順番が決まらないとき、足りていないのは課題の整理ではなく、行き先のほうであることがあります。当社が経営・事業診断で、いまのお困りごとより先に「10年後にどうありたいか」を伺うのは、そのためです。

順番が決まらないのは、行き先が決まっていないからです

課題は、たいてい互いにつながっています。担い手が足りないのは、任せられる形になっていないからで、任せられないのは工程が一人の手に残っているからで、そこに手をつけられないのは日々の注文に追われているから。こうしてつながっていると、どこが先かを課題の側から決めることができません。

順番は、課題の重さではなく、行き先で決まります。同じ「担い手が足りない」でも、いまの規模を保ちたいのか、規模を大きくしたいのかで、必要な人数も、育てる年月も、迎える相手も変わります。行き先が置かれていないと、どの課題も同じ重さに見えてしまい、いつまでも並んだままになります。順番の決め方そのものは何から手をつけるか、順番の決め方に手順として置いています。

もうひとつ、行き先が無いと起きることがあります。手を打った後で、それが効いたのかどうかを判断できません。効いたかどうかは、目指している姿に近づいたかどうかでしか測れないからです。そのため、行き先の無いまま打った手は、良かったのか悪かったのかが分からないまま積み上がっていきます。

5つの型から、いちばん近いものを選びます

とはいえ、10年後の姿を白い紙に書いてくださいと申し上げても、なかなか筆は進みません。日々の仕事から離れた問いだからです。そこで当社では、あらかじめ5つの型をご用意して、そのなかから近いものを選んでいただく形をとっています。型と、それぞれで先に来る課題の対応は5年後・10年後の姿を決めるにまとめています。

ここでは、型を選んだときに社内で何が決まり、どこでつまずきやすいかを並べます。下の表は優劣を示すものではありません。どれを選ぶかで、最初に交わす会話が変わるということを見ていただくためのものです。

10年後の姿 選ぶと、最初に決まること つまずきやすいところ
いまの規模と体制を保ちながら、確実に続けていく 誰に、どの工程を、いつまでに渡すか 「現状維持」と読み替えられ、何も決めない口実になりやすい
これまでとは違う顧客層に向けた商品をつくる いまのお客様は誰で、新しい相手はどこが違うのか 作る側の都合で「新しい層」を思い描いてしまう
体験や教育、文化の発信を担う拠点になる 受け入れる日と、案内に立つ人 手が空いている人がいないまま、受け入れだけ先に決まる
海外市場へ出て、国際的に知られる存在をめざす どの国の、どんな暮らしに向けるか 出ることが目的になり、戻ってからの改良が抜ける
生産体制を強化し、規模を大きくしていく 増やすのは量か、種類か 設備を先に決めてしまい、売り先が後追いになる

五つのうち、どれかひとつを選ばなければならない決まりはありません。ただ、三つも四つも同時に選ぶと、結局どれも進まないというのが、これまで伺ってきたお話から言えることです。まず一つを主にして、残りを従に置く。そのくらいの決め方で十分に働きます。

型を選ぶと、同じ「売上」でも中身が変わります

型を選ぶ効き目がいちばん分かりやすく出るのは、売上の話をするときです。売上を伸ばしたいという言葉は、どの型を選んでも出てきます。けれども中身はまるで違います。

確実に続けていく型を選んだ方にとって、売上はいま作れる量のなかで、値と取引先の組み合わせを整える話になります。量を増やす前提が無いので、単価の低い取引を見直したり、支払いの条件を揃えたりする方向へ進みます。

規模を大きくしていく型を選んだ方にとっては、売上は作れる量そのものを増やす話になります。設備と人と資金が同時に要りますから、順番の組み立て方も、話を持っていく相手も変わります。

違う顧客層に向ける型であれば、売上はまだ取引の無い相手に、どう見つけていただくかという話です。いまの取引先を増やすのではないので、確かめる相手も、試す場所も別になります。

同じ一言が、これだけ違う仕事を指しています。行き先を決めずに「売上を伸ばす」を課題として置くと、社内でも支援する側でも、それぞれが別のものを思い浮かべたまま話が進みます。相談がかみ合わない原因の多くは、ここにあります。

選べないときに、起きていること

型をご覧いただいても、どれも選べないと仰る場合があります。このとき、迷っておられるように見えて、実際には別のことが起きていることがあります。

ひとつは、決める人が定まっていない場合です。代替わりの途中にあるとき、いまの代の方と次の代の方で見ている先が違うことがあります。この違いは、隠れたまま日々の判断に出てきます。設備を入れる、入れない。取引先を増やす、増やさない。その都度ぶつかるのですが、原因が10年後の像の違いにあると気づかれないまま時間が過ぎます。

もうひとつは、選ぶと何かを諦めることになる、と感じておられる場合です。実際にはそうではありません。型は、いま主にするものを決めるだけのもので、あとから変えてかまいません。むしろ、一度決めて動いてみたほうが、次に何を選び直せばよいかが見えてきます。

三つ目は、足元が苦しくて、10年後を考える余裕が無い場合です。これは正直なお話で、無理に先を描いていただく必要はありません。その場合は、急ぐことと効くことを分けるところから始めます。分け方は「急ぐこと」と「効くこと」を分けるに置いています。

どう進めるか

次の五つを、手元で確かめてみてください。紙とペンだけで進められます。

  • 五つの型のうち、いちばん近いものを一つ挙げられるか
  • その型を、社内のもう一人も同じように選ぶか
  • 選んだ型でいう「売上を伸ばす」が、具体的に何を指すか言えるか
  • その型で先に来る課題が、いま手をつけている課題と一致しているか
  • 10年後ではなく3年後であれば、どこまで進んでいたいか

二つ目で食い違いが出たら、それは悪いことではありません。食い違いが表に出た日が、いちばん安く直せる日です。設備や人を決めた後で出てくると、戻すのに費用と時間がかかります。

四つ目で一致しない場合は、どちらかを見直します。型のほうを選び直してもよいですし、いま手をつけている課題を後ろへ回してもかまいません。大切なのは、行き先と手元の仕事がつながっていることです。順番の決め方に迷われている場合は、既存の記事何から手をつけるか分からないときの、順番の決め方もあわせてご覧ください。

当社は、答えを外から差し上げる立場にはないと考えています。10年後の姿は、産地の皆さまご自身が決めるものです。当社がお力になれるのは、選ぶための材料を並べ、選んだ後の順番をご一緒に組み立てるところまでです。経営・事業診断は、いまの状況を伺い、課題を特定してご報告するところまでを無償で承っています。産地事業者の方へのご案内は産地事業者の方へにまとめています。

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