目標は、短期・中期・長期に分ける
産地の取り組みは、年度の区切りで組み立てられることが多くあります。区切りがあること自体は、進める上で助けになります。ただ、測る物差しまで年度に揃えてしまうと、その年のうちに数えられる成果ばかりが並びます。担い手が育つことも、販路が根づくことも、一年では表に出てきません。時間の長さが違うものを、同じ物差しで測らないための置き方について整理します。
単年度の物差しだけだと、何が起きるか
一年で数えられるものは限られています。相談の件数、参加された事業者の数、開催した回数、出展した展示会の数。どれも数えやすく、報告にも書きやすいものです。
ところが、数えやすいものが並ぶと、そちらへ寄っていきます。件数を増やすことが目的になり、来ていただくこと自体が成果として扱われるようになります。参加された方が、その後どうなったかは、翌年度の物差しには載りません。
そしてもう一つ、時間のかかる取り組みが選ばれにくくなります。後継者の育成も、産地としての売り先の作り直しも、一年目には見せられるものが出ません。成果が出るまでに三年かかる取り組みは、一年目の報告で「進んでいない」と読まれてしまいます。
結果として、毎年おなじ種類の取り組みが並び、産地の状態は変わらないまま年数だけが過ぎます。急ぐことばかりを追いかけると同じ場所へ戻ってくるという点は、事業者向けの整理になりますが「急ぐこと」と「効くこと」を分けるにも置いています。
三つの時間に、別の目標を置く
そこで、目標を三つの時間に分けて置きます。同じ取り組みを三段階に切るのではなく、それぞれの時間で「何が変わっていればよいか」を別々に決めるという置き方です。
| 時間 | 置く目標の性質 | 測るもの |
|---|---|---|
| 短期(一年ほど) | 動き出すこと。窓口や場が実際に機能しているか | 相談の中身、来られた方の顔ぶれ、届いていない層 |
| 中期(三年ほど) | 取り組んだ先の状態が変わること | 新しい取引の有無、後継の話が始まった先の数 |
| 長期(十年ほど) | 産地として続く形になっていること | 動いている先の数、欠けかけた工程が埋まったか |
短期の欄で、件数ではなく中身を挙げているのには理由があります。一年目に本当に知りたいのは、来た数ではなく、来なかった層がどこかということです。相談に来られるのは、もともと動いている先であることが多く、いちばん手当てが要る先ほど来られません。
中期の欄は、事業者ごとの状態で見ます。全体の数字にすると、動いた先と動かなかった先が打ち消し合って見えなくなります。三年かけて何軒が動いたのかを、軒数で持っておくほうが、次の設計に使えます。
長期の欄は、産地の形そのものです。ここは数字にしにくいのですが、実態を数えていれば比べられます。数え方を毎年同じにしておくことが、長期の目標を測れる形にする唯一の方法です。数え方は産地振興の体制づくりに置いています。
途中で何を見るかを、先に決めておく
中期・長期の目標を置くと、必ず出てくる問いがあります。三年後まで何も分からないのか、というものです。そんなことはありません。結果より先に動くものがあり、それを見ておけば途中で軌道を直せます。
たとえば、後継者に関する取り組みであれば、承継が実際に起きるのは何年も先です。けれども、その手前に動くものがあります。ご家族で承継の話をされた先が増えたか。渡す側が時期を口に出せるようになったか。工程の書き出しに着手された先があるか。これらは一年目でも動きます。
販路の取り組みであれば、売上が変わる前に、見積りの依頼や商談の数が動きます。先に動くものを一つか二つ決めておくと、途中の年でも話し合いができます。
ここで気をつけたいのは、途中で見るものを目標にすり替えないことです。商談の数を増やすこと自体が目的になると、また件数の話に戻ってしまいます。途中で見るものは、進み具合を知るためのものであって、達成すべきものではありません。
長期の目標が数字にならないとき
長期の目標は、数字にしにくいことがあります。産地が続いている、技が次の世代へ渡っている。こうした状態は、数えられる形に落とすと痩せてしまいます。
無理に数字へ置き換えなくてもよい、というのが当社の考え方です。そのかわり、どういう状態になっていれば「続いている」と言えるのかを、言葉で書いておきます。書いておけば、後から判断できます。
たとえば、こういう書き方があります。主要な工程のいずれについても、担える先が産地に二軒以上ある。若い方が新しく入られた先が、毎年いくつかある。産地の外から直接注文が来る先がある。数字ではありませんが、当てはまるかどうかは確かめられます。
他の地域の目標をそのまま持ち込まないこともお伝えしています。掲げられている目標は、その地域の事情から出てきたものです。目標の言葉だけを写すと、測る対象が自分たちの産地に無い、ということが起こります。この点は既存の記事他所の成功例を、そのまま持ち込まないで扱っています。
どう進めるか
次の五つを、いまの計画に当てて確かめてみてください。
- いま置いている目標が、短期・中期・長期のどれに当たるか分けられるか
- 一年で数えられるものだけが並んでいないか
- 三年後に何が変わっていればよいかを、軒数で言えるか
- 結果より先に動くものを、一つか二つ決めているか
- 長期の状態を、数字でなくてよいので言葉で書けているか
二つ目で偏りが見つかったら、取り組みを減らす必要はありません。物差しを足すだけで足ります。いまの取り組みのうち、三年かけて効くものはどれかを選び、そちらに別の見方を用意します。
当社は、支援の中身も目標も、外から決める立場にはないと考えています。お力になれるのは、実態を数えるところからご一緒し、時間の違うものを分けて置き、途中で見るものを決めるところまでです。進め方は、まず経営・事業診断で現在地を確かめ、そのうえでプログラムを策定し、完了まで伴走するという三段で考えています。診断は、課題を特定してご報告するところまでを無償で承っています。ご案内は自治体・関連事業者の方へにまとめています。