//資金・補助金
補助金は「取る」より「合わせる」
補助金の話は、たいてい公募の知らせから始まります。案内を見て、うちも出せるだろうか、と考える。その順番でも通ることはありますが、あとになって「この設備、本当に要ったのだろうか」という話になることがあります。先にあるべきなのは制度ではなく、自社の計画のほうです。
制度が先に来ると、要らない投資が残る
補助金は、使えるお金が降ってくる仕組みではありません。自社の計画のなかで必要だと決めた投資を、後押しするための手段です。ここが入れ替わると、制度の条件に合わせて投資の中身が決まっていきます。
起きやすいのは、こういう流れです。案内に目を通し、対象になりそうな費目を探し、それに合う機械や工事を当てはめる。書類は通る。ところが動き出してみると、使う頻度が思ったより低い。置き場所を空けるために別の作業が窮屈になる。補助を受けた分は確かに軽くなっていますが、残りは自社で払っています。要らない投資は、割引されても要りません。
順番を守るというのは、難しいことではありません。先に「三年のうちに、何をできるようにしておきたいか」を決めておく。そのうえで案内を見る。合うものがあれば使い、無ければ見送る。見送るという判断ができるようになるだけで、投資の質はずいぶん変わります。考え方そのものは補助金の考え方にまとめてあります。
順番が違うと、何がどう変わるか
同じ設備を入れる場合でも、どちらから始めたかで、後に残るものが変わります。
| 制度から始めた場合 | 計画から始めた場合 | |
|---|---|---|
| 選び方 | 対象になる費目から、買えるものを探す | 必要なものを決めてから、合う制度を探す |
| 合うものが無いとき | 無理に当てはめる | 見送る、または自己資金と借入で進める |
| 書類づくり | 制度の言葉に合わせて、後から理由を作る | すでにある計画を、様式に沿って書き写す |
| 終わったあと | 使い道の説明が、社内でも曖昧に残る | 次の投資の順番が、そのまま見えている |
書類づくりの行が、いちばん実務に響きます。計画が先にあれば、申請書は「翻訳」の作業になります。計画が無ければ、申請書を書きながら計画を作ることになり、時間も気力も余計にかかります。計画の組み立て方は事業計画書の組み立て方をご覧ください。
「合わせる」というのは、具体的には突き合わせの作業です。自社の計画にある投資を並べ、制度の側が対象としている範囲と重ねてみる。重なるものがあれば申請を考え、重ならなければ別の資金の手立てを考える。重なりを探す作業であって、寄せていく作業ではありません。ここを混同すると、いつのまにか計画の側が動きます。計画は自社のものですから、制度に合わせて書き換えるものではありません。
見落とされやすいのは、お金が入る時期です
採択されても、資金は原則として後払いです。先に支払い、あとから受け取る。つまり、その間の立替が必要になります。ここを見込まずに進めると、通ったのに苦しくなる、という妙なことが起こります。
ですので、申請を考える段では、立替の資金をどうするかも一緒に考えておかれることをお勧めします。手元の資金で足りるのか、つなぎの借入が要るのか。金融機関との相談は、採択の前から始めておいて構いません。お金の話は、通ってから始めるには遅いことがあります。
もう一つ、情報を追い続けることの負担があります。公募には期間があり、要件も年によって変わります。これを本業のかたわらで追い続けるのは、現実にはかなり難しいことです。だからこそ、商工会議所や支援機関、専門家と、ふだんから関係を持っておく意味があります。案内が出てから探し始めるのではなく、こちらの計画を知っている相手が、合いそうなものを教えてくれる状態にしておく、ということです。
そして、使ったあとにも残るものがあります。補助金を活用した実績は、金融機関からの信用として、また対外的にお伝えする材料としても働きます。一度きりの資金ではなく、次につながる履歴として扱えると、掛けた手間が生きてきます。
手間の面も、正直に見ておく必要があります。申請の書類づくりには、まとまった時間がかかります。日々の製造や納品を抱えながら、その時間をどこから出すのか。社内で誰が担うのかを決めずに始めると、締切の直前に一人へ寄ります。専門家に手伝ってもらう場合でも、自社の計画と数字を説明できる方が一人は要ります。ここを見込んでおくと、申請そのものを見送るという判断も、落ち着いてできるようになります。
どう進めるか
申請を考える前に、次の五つに答えられるかを確かめてみてください。
- 三年のうちに、何をできるようにしておきたいかを言えるか
- そのために要る投資を、優先順に並べられるか
- その投資は、補助が無くてもいずれ必要になるものか
- 支払いから受け取りまでの間、立替の見通しが立っているか
- 計画を知っている相談相手が、社外にいるか
三つ目が、いちばん大事な問いです。補助が無ければ要らないものは、補助があっても要らないことが多いのです。逆に、いずれ必要になるものであれば、制度を待つあいだに時期を逃さないかどうかも、あわせて考えることになります。
もう一つ、去年の記憶で判断しないことです。制度は、名前が同じでも中身が変わることがあります。対象になる費目、規模の要件、提出する書類。以前に一度見たという記憶は、むしろ判断を誤らせることがあります。考え方は変わりませんが、条件はその都度確かめる。この二つを分けておくと、振り回されにくくなります。
なお、制度の名前や条件、公募の時期は変わります。実際にお使いになるときは、必ず最新の公募要領をご確認ください。当社も、採択をお約束することはできません。できるのは、計画のほうを一緒に整えて、合うものがあるかを見ていくことです。原材料の高騰など、投資の前に先に手を打つべきことがある場合は原材料が上がったとき、値上げの前にもあわせてご覧ください。経営・事業診断は、結果をご報告して課題を特定するところまでを無償で承っています。