定番が売れている理由を言葉にする kogei_ai 2026年9月2日

定番が売れている理由を言葉にする

売上を伸ばしたいと考えたとき、新しい品を作るという案が最初に浮かびます。けれども、手元の品でできることが残っていることは少なくありません。しかも、その確かめには費用がかかりません。新しい品に取りかかる前に、いま長く売れている品がなぜ選ばれているのかを、一度言葉にしてみてください。ここが埋まっているかどうかで、次の一手の確かさが変わります。

いちばん強い品の強さが、社内で言葉になっていない

長く続いている定番は、放っておいても動きます。動いているあいだは、なぜ売れているのかを問われる機会がありません。その結果、自社でいちばん強い品の強さが、誰の口からも説明されないまま何年も過ぎるということが起きます。

これは、次に作るものを考えるときに効いてきます。土台になるはずの理由が空いているので、新しい品の話が「最近こういうものが流行っているらしい」という外の話から始まってしまうのです。外から始めた企画は、途中で必ず迷います。自分たちが何で選ばれてきたのかという軸が無いためです。

棚卸しの中身は難しくありません。どなたが、どの場面で使い、何を理由に選んでおられるのか。この三つだけです。分からなければ、買ってくださった方に伺うのがいちばん早い道です。「なぜこれを選ばれたのですか」と尋ねると、作り手が思っていた理由と違う答えが返ってくることがあります。その違いこそが、次の材料になります。

落ちてきた品は、三つに切り分けます

以前は動いていた品が止まったとき、品そのものに手を入れたくなります。ただ、原因が品の側にあるとは限りません。先に切り分けないと、直さなくてよいところを直すことになります。

原因の在り処 そこが原因なら現れること 手を入れる先
品そのもの 手に取られるが、置いて戻される 寸法、色、使い勝手、価格
伝え方 そもそも見られていない、説明が届いていない 写真、説明、載せる場所
届け先 見た方は良いと言うが、買う場面がない 置く場所、売る時期

三つのどれなのかは、聞けば分かることが多いものです。展示会でも店頭でも、目の前で起きていることを見ておられるはずです。切り分けをせずに品を作り替えると、次に落ちたときにも同じ手を打つことになります。見直しの順序は既存商品を見直すに整理しています。

変わったのは品物ではなく、置かれる場所かもしれません

品物そのものは変えていないのに、以前ほど動かなくなった。そう感じるとき、変わったのは品物ではなく、それが置かれる場所であることがあります。住まいの広さ、食卓のかたち、贈りものの習わし、人を迎える機会。こうした場面が変われば、同じ品物でも置かれる場所がなくなります。技が古びたわけでも、仕事が粗くなったわけでもありません。前提のほうが動いています。

この見立ては、そのまま打ち手を分けます。品質の問題だと考えるかぎり、さらに丁寧に作るという方向にしか進めません。置かれる場所の問題だと分かれば、寸法、価格帯、使い方の伝え方、届ける先という別の手立てが見えてきます。背景は暮らしが変わり、置かれる場所が変わったで扱っています。

展示会で手応えはあったのに注文につながらない、という場合も、ここが関わっていることがあります。手応えは品物への評価で、注文はその方の暮らしのなかに置き場所があるかどうかの答えだからです。褒められることと、買われることは、別のことが起きています。

置かれる場所を考えるとき、手がかりは案外近くにあります。品物を包んで出すときの箱の大きさ、届け先の住所、注文の時期。贈りものとして選ばれているのか、ご自分のために選ばれているのかは、この三つを並べるだけでも見当がつきます。贈りものが多いのであれば、包みと添え書きが品物と同じくらい効きますし、ご自分のためであれば、手入れの仕方や仕舞い方の説明が決め手になります。

いまある品でも、組み合わせ、寸法の見立て、使い方の伝え方を変えることで届く場合があります。新しく起こすか、いまあるものを活かすかは、どちらが正しいという話ではありません。ただ、確かめる費用が違います。いまあるものを試すほうは、作らずに確かめられます。

やめる品を決めることも、商品の仕事です

品数を減らす話は、後ろ向きに聞こえます。けれども、限られた時間をどこへ振り向けるかという、経営そのものの判断です。どれも少しずつしか出ていない状態は、手が薄く散っているという意味でもあります。

やめる決め方は、売上の順に切るだけではありません。手間に対して残るものが小さい品、続けるために特定の材料や工程に頼りすぎている品も候補になります。決めたら、取引先へ先にお伝えしておくと、関係が傷みません。

逆に、変えないという判断も立派な判断です。大切なのは、変えない理由を言葉にしておくことです。理由が言葉になっていれば、次に迷ったときに戻れます。受け継いできたものの本質を壊さない範囲で、いまの暮らしへつなぐ。どこが本質なのかは、作ってこられた方がいちばんよくご存じです。私たちは、そこに正解を持っているとは考えていません。

どう進めるか

次の五つを、手元で確かめてみてください。数日あれば終わります。

  • いちばん売れている品が、なぜ選ばれているかを一文で言えるか
  • その理由を、買ってくださった方に確かめたことがあるか
  • 落ちてきた品について、原因が品・伝え方・届け先のどれかを切り分けられているか
  • 寸法や使い勝手が、いまの暮らしと釣り合っているかを見たことがあるか
  • この数年でやめると決めた品が、ひとつでもあるか

五つのうち二つ以上が空いているようでしたら、新しい品に取りかかる前に、そこを埋めるところからのほうが早く進みます。棚卸しに費用はかかりません。新しい品は、そのあとでも遅くありません。

当社は、商品づくりをご一緒するとき、市場調査から始めて、コンセプト、企画開発、そして販路という順で進めます。最初の調査は、どこで売れているかを調べるためというより、誰の、どの場面に置かれる品物にするのかを決めるために行います。ご相談は経営・事業診断から承っており、結果をご報告して課題を特定するところまでは無償です。産地事業者の方に向けたご案内は産地事業者の方へにまとめています。

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