//販路開拓
間に立つ人がいなくなった後で
昔は問屋さんが全部やってくれた。そう仰る方は少なくありません。取引の形が変わり、直接お売りする道も増えました。増えたのは選択肢ですから、良い変化でもあります。ただ、間に立っていた方がしていた仕事は、経路が変わっても無くなったわけではありません。誰かが引き受けなければならないものが、そのまま残っています。まず、その中身を数えるところからです。
無くなったのは経路ではなく、その人がしていた仕事です
間に立つ方が担っていた仕事を並べてみると、思っていたより多いことに気づきます。品物を仕入れて売るというだけの役割ではありませんでした。
どの品が動くかを見極めて、作る側に伝える。売れ残りを自分の側で引き受ける。小売の代金を立て替え、回収まで見る。売り場に並べる形を整える。そして、お客様の反応を持ち帰って、次の注文の形に変えて渡す。
この一つひとつが、経路が変わったからといって不要になったわけではありません。直接お売りするということは、これらを自分の側で持つということです。持てるものもあれば、持ちきれないものもあります。まず数えなければ、どれが持てていないのかが分かりません。経路ごとの違いそのものは流通の変化と、産地が持てる選択肢に整理しています。
担われていた仕事を、五つに分けて数える
下の表は、間に立つ方が担っていた仕事を分けて並べたものです。右の欄に、いまどなたが担っているかを書き込んでみてください。空欄が残るところが、いま抜けている仕事です。
| 担われていた仕事 | 抜けると、どう表に出るか |
|---|---|
| 何が動くかを見極めて、作る側へ伝える | 作ったものと求められるものがずれ、在庫が偏る |
| 売れ残りを引き受ける | 作る量を決められず、注文が来てから作るしかなくなる |
| 代金を立て替え、回収する | 入金の時期が読めず、材料の手当てが遅れる |
| 売り場に並ぶ形を整える | 置いていただけても、手に取られる場所に並ばない |
| お客様の反応を持ち帰る | 売れなかった理由が残らず、次に活かせない |
五つのうち、直接お売りする形にすると自然に手元へ来るものがあります。お客様の反応がそれです。直販のいちばんの値打ちは、単価が残ることよりも、反応がそのまま届くことのほうにあります。
一方で、持ちきれないことが多いのが、上から二つ目と三つ目です。売れ残りを引き受ける役がいなくなると、作る量を決める根拠が無くなります。代金の立て替えが無くなると、入金までの期間を自分で埋めることになります。この二つは資金の話なので、売上の増減より先に効いてきます。
全部を自分で持たなくてもかまいません
五つを数えると、たいてい重たく感じられます。ただ、すべてを自分で持つ必要はありません。持つもの、人に頼むもの、いまは持たないと決めるもの。この三つに仕分けるところまでが、この作業の目的です。
人に頼めるものもあります。売り場に並ぶ形を整える仕事は、置いていただく相手と一緒に考えられます。代金の回収については、条件の決め方で軽くできる部分があります。先払いにする、数量を抑える、支払いの期日を短くする。どれも交渉ごとですが、頼めないことではありません。
いまは持たないと決めることも、立派な判断です。たとえば、売れ残りを引き受ける機能を持てないのであれば、受注してから作る形に寄せる。作れる量が限られるかわりに、在庫を抱えずに済みます。どちらが正しいという話ではなく、いまの体力に合うほうを選ぶという話です。
そして、ひとつの経路に全部を委ねないことです。ひとつに頼ると、その経路の都合がそのまま事業の都合になります。経路ごとに何を担わせるかという見方は販路の種類と使い分けに置いています。
直販と卸は、どちらかを選ぶ話ではありません
間に立つ方がいなくなったという話をすると、これからは直販だ、という結論になりがちです。けれども、二つは別の働きをしています。
直接お売りする形では、反応が届き、値も残ります。そのかわり、見つけていただくところから自分でやることになります。置いていただく形では、見つけていただく仕事の一部を相手が担ってくださいます。そのかわり、反応は薄まって届きます。
両方を持っていると、片方が動かない時期にもう片方が支えます。それだけではなく、直販で得た反応を、置いていただく先への提案に使えます。どの品が誰に手に取られたかを知っている作り手は、売り場の相手にとっても心強いものです。
比率は、いまの段階によって変わります。作る量が限られる時期と、増やせる時期では、置き方が違って当然です。組み合わせ方は直販と卸のバランスにまとめています。どの販路から始めるかで迷われている場合は、既存の記事展示会・小売店・ネット販売の選び方もあわせてご覧ください。
どう進めるか
次の五つを、手元で確かめてみてください。
- 間に立つ方が担っていた五つの仕事のうち、いま誰も担っていないものはどれか
- 作る量を決めるとき、何を根拠にしているか言えるか
- 納めてから入金までの期間を、月数で言えるか
- 売れなかった品について、理由が手元に残っているか
- ひとつの取引先が、売上のどのくらいを占めているか
三つ目と五つ目は、資金の話につながります。入金までの期間が長く、しかも取引先が偏っているとき、売上が伸びている最中に資金が苦しくなることがあります。売上の数字だけを見ていると、この兆しは表に出てきません。
四つ目が空欄のままでしたら、そこから始めるのがいちばん安く済みます。記録するのに費用はかかりません。戻ってきた品、聞かれた質問、手に取ってから置かれた品。これを書き留めるだけで、間に立つ方が持ち帰ってくださっていた情報の一部を、自分の手で持てるようになります。
当社は、どの経路が正しいかを外から決める立場にはないと考えています。お力になれるのは、いま抜けている仕事を一緒に数え、持つものと頼むものを仕分け、順番を組み立てるところまでです。経営・事業診断は、いまの状況を伺って課題を特定し、ご報告するところまでを無償で承っています。ご案内は産地事業者の方へにまとめています。