//原材料・調達
材料が無くなる日を、先に考える
材料についてのご相談は、たいてい値段の話から始まります。ただ、伺っていくと、値段よりも重い話が隠れていることがあります。その材料を作っておられる方が、もう続けられないかもしれない、という話です。値段の問題と、手に入らなくなる問題は、見た目が似ていて中身がまったく違います。ここを分けておかないと、打つ手の順番を誤ります。
値段の話と、無くなる話は別のものです
値上がりの理由が、自社の買い方や量にあるのなら、条件を見直すことで動く余地があります。まとめて買う、時期をずらす、規格を揃える。相手のある話ですが、話し合いで動く範囲です。
けれども、材料そのものを作る方が減っている、扱ってきた先が取り扱いをやめた、という事情であれば、話が変わります。一社がどれだけ粘って交渉しても、元には戻りません。戻すには、作る側が続けられる形をどこかで作るしかないからです。
この二つを分けないまま交渉だけを続けると、時間と関係だけが減っていきます。先にすべきなのは、値段を下げる算段ではなく、いま起きていることがどちらなのかを確かめることです。見分け方は原材料の脆さは、産地ひとつでは解けないに整理しています。
見分けるための、三つの問い
次の三つを確かめると、たいてい見当がつきます。どれも、電話が数本あればわかることです。
| 確かめること | 一社の問題なら | 産地の問題なら |
|---|---|---|
| 同業の他社も困っているか | 自社だけが困っている | 周りも同じ状況にある |
| 仕入先が離れた理由 | 取引条件や量が合わない | 材料側の担い手や設備が続かない |
| 代わりの入手先 | 探せば見つかる | 産地の外にも見当たらない |
右の列に印がつくなら、それはその工房の力量の問題ではありません。産地が共同で持つべき課題です。ひとりで抱え込むほど、打ち手は遠のきます。逆に、左の列であれば、自社の買い方や取引の見直しで動く余地があります。
ひとつ気をつけたいのは、印がつく場所が思い違いになりやすいことです。困っているのは自社だけだと思っていたら産地全体の話だった、ということも、その逆もあります。同じ材料を使っている先に一度伺うだけで、見立てが変わることがあります。聞きにくいと感じられるかもしれませんが、相手も同じことを気にしておられる場合が少なくありません。
この確かめのついでに、もうひとつ聞いておきたいことがあります。仕入先の方に、あと何年続けられそうかを伺えるかどうかです。踏み込んだ話に見えますが、長く取引してきた間柄であれば、たいてい教えてくださいます。時期が分かれば、慌てずに支度ができます。
いま一社に頼っている材料を、数えてみる
材料の心配は、起きてから考えるものだと思われがちです。ただ、実際に止まってからでは、選べる手が少なくなります。まだ困っていないうちに、一度数えておく値打ちがあります。
作っておられる品ごとに、使っている材料と、その仕入先を並べてみてください。仕入先が一社しかない材料に印をつけます。そのうえで、その材料が来なくなったとき、何が作れなくなるかを書き添えます。この一覧があると、優先して手を打つべき材料が、自然に浮かび上がります。
この作業は、工程の棚卸しとよく似ています。品物が仕上がるまでの道すじのうち、代わりのきかない場所を先に見つけるという点で、担い手の話と同じ構えです。材料と担い手は、別の話に見えて、産地では同じ形で細っていきます。
一覧ができたら、印のついた材料について、二つのことを考えておきます。ひとつは、どのくらい先まで手元にあるか。もうひとつは、代わりが要るとなったとき、確かめるのにどのくらいかかるかです。材料を替えれば、色も手ざわりも仕上がりも変わります。試して、直して、取引先に見ていただいて、という往復には時間がかかります。切り替えを値段だけで決められないのは、このためです。
そして、替えてよい部分と替えてはいけない部分は、作っておられる方にしか分かりません。私たちは、そこに正解を持っているとは考えていません。ご一緒できるのは、いつまでに何を確かめておくかという段取りの側です。品物そのものの判断は、作り手の領分として残しておくべきものだと考えています。
産地の問題なら、産地の側で持つ
共同で購入する、材料の作り手を支える、次の担い手を探す。どれも一社では始められません。組合のある産地では組合が入口になりますし、無い場合は、同じ材料を使う先が集まるところから始めることになります。
始めるときのこつは、大きく構えないことです。全品目を一度にまとめようとすると、規格と時期を揃えるだけで年単位の話になります。まずは一品目、しかも規格の揃いやすいものから小さく試すほうが、形になります。進め方は共同購買という手にまとめています。
また、すでにある枠組みを先に確かめておくことをお勧めします。組合や既存の集まりで、似た取り組みが過去にあったのに立ち消えている、という場合が少なくありません。そのときなぜ続かなかったのかが分かれば、同じところでつまずかずに済みます。
産地の側で体制をつくる話になった場合、当社は自治体や組合のご担当者と一緒に進めることもしています。事業者の方からのご相談が、結果として産地全体の話につながることもあります。産地としての進め方は産地振興の体制づくりにまとめています。
どう進めるか
次の五つを確かめてみてください。紙一枚で足ります。
- いま困っているのは、値段の話か、手に入らなくなる話か
- 仕入先が一社しかない材料が、いくつあるか
- その材料が来なくなったとき、何が作れなくなるかを言えるか
- 同じ材料を使っている先が、産地に他にいるかどうかを知っているか
- 仕入先の側の事情を、直接伺ったことがあるか
五つのうち二つ以上が空いているようでしたら、値段の交渉より先に、そこを埋めるところからのほうが早く進みます。そして、これは急ぎではないけれど効く種類の仕事です。止まってから始めると、選べる手が減ります。
当社は、経営・事業診断から始めて、原材料の課題についても、いまの状況を一緒に整理していきます。診断は、結果をご報告して課題を特定するところまでを無償で承っています。産地事業者の方に向けたご案内は産地事業者の方へにまとめています。