お金の相談は、要る前にしておく kogei_ai 2026年9月7日

お金の相談は、要る前にしておく

金融機関へ足を運ぶのは、たいてい資金が要るようになってからです。設備を入れることになった、材料の仕入れが先に出る、賞与の月が近い。そのときになって、久しぶりにお電話をする。それで通ることもありますが、いちばん急いでいる場面で「では資料をお揃えください」と言われることもあります。相談の中身よりも、相談の時期のほうが結果を決めていることがあります。

「要るときだけ訪ねる」が、いちばん多い形です

決算書はお渡ししている。けれども、それ以外の話はしていない。業績が落ちた期のことは、こちらから触れないようにしている。付き合いのある先は一行だけ。この形は、産地の会社では珍しいものではありません。忙しさのなかで、悪気なくそうなっていきます。

この形で困るのは、急いでいるときです。相手の手元にあるのは、久しぶりに持ち込まれた「いまの数字」だけになります。そこから判断するしかありません。今期が落ちているのは大口の納品時期がずれたからだ、という事情は、こちらが言わなければ数字の外にあります。説明する時間が要り、その時間はたいてい残っていません。

担当の方が替わることも、頭の隅に置いておかれるとよいと思います。引き継ぎは相手の組織のなかで行われますが、こちらの事情のこまかいところまで引き継がれるとは限りません。そのとき残っているのは、こちらが渡してきた資料と、会った回数です。ふだんのやりとりは、担当が替わっても消えない形で積み上がっていきます。

ふだんから渡している場合は、相手の手元に流れがあります。落ちた期も、戻った期も、その理由も並んでいる。同じ決算書でも、単独で置かれるのと、流れのなかに置かれるのとでは、読まれ方が変わります。金融機関は、お金を貸す相手であると同時に、事業を外から客観的に見てくれる相談相手にもなり得ます。その役割は、付き合いの厚みがあってはじめて働きます。

分かれ目は三つあります。時期と、話し手と、見せる範囲です

やり方の違いは、細かい作法よりも、この三つに出ます。

要るときだけ伺う場合 ふだんから伺う場合
いつ行くか 資金が要ると決まってから 期の区切りごと。用が無くても行く
誰が話すか 社長お一人 数字を説明できる方が、社内に複数いる
何を見せるか 決算書。良い材料が中心になる 試算表と計画。悪い材料も先に出す
相手にとっての判断材料 その時点の数字 数字と、その変わり方

二つ目の「誰が話すか」は、見落とされがちですが後から効いてきます。数字を説明できるのが社長お一人だけ、という状態は、承継の場面でそのまま止まります。継ぐ方が決まっていても、相手からすれば初対面です。同席していただく、途中から説明を代わっていただく。それだけで、次の代の話が別のところから始まります。

三つ目の「何を見せるか」は、迷われるところだと思います。悪い材料を先に出すのは気が重いものです。ただ、伏せておいたことは、たいてい次の期の説明を苦しくします。後から分かった悪い話は、悪い話そのものより重く扱われます。ここは、判断が分かれるというより、経験のうえで答えが出ている部分だと考えています。

読まれているのは、数字そのものより「続いているか」です

決算書と試算表を定期的にお渡しし、業績が良いときも悪いときも状況を伝え続ける。これが信頼関係の基本だと、私たちは考えています。良いときだけ足が向くのは自然なことですが、良いときにしか来ない会社と、どちらの期にも来る会社とでは、伝わるものが違います。

もう一つ、計画をお渡ししておくことの効き方があります。こちらの向かう先を知っている相手は、合いそうな話があるときに、向こうから声をかけてくれることがあります。案内が出てから探し始めるのと、こちらの計画を知っている人がいるのとでは、動ける速さが違います。この順序の話は補助金は「取る」より「合わせる」にも書きました。

それから、一行だけに頼らないという考え方があります。複数の金融機関とお付き合いを持っておくと、一つの先の方針が変わったときに、経営全体がそれに左右されにくくなります。ただし、数を増やすこと自体が目的ではありません。増えれば、渡す資料も説明も増えます。無理のない範囲で、二つ目の相談先を持っておく。そのくらいの構えでよいと思います。

専門的な相談ほど、早めがよいという点も申し添えます。事業承継のこと、経営者の個人保証のこと。こうした話は、必要になってから持ち出すと選べる幅が狭くなります。まだ具体的でなくても、考え始めていると伝えておくだけで、相手の側の準備が変わります。

どう進めるか

大がかりなことをする必要はありません。次の五つに答えられるかを、確かめてみてください。

  • いちばん最近お会いしたのは、いつか。それは資金の話があったときか
  • 決算書のほかに、期の途中の数字をお渡ししているか
  • 数字を説明できる方が、社長のほかにおられるか
  • 落ちた期について、こちらから理由をお伝えしたことがあるか
  • 相談できる先が、二つ以上あるか

一つ目で「資金の話があったときだ」となる場合は、用の無い訪問を一度だけ入れてみることをお勧めします。渡すものは、いまある資料で構いません。大事なのは、次にお会いする約束ができることです。関係は、書類の厚さではなく、間隔で作られていきます。

用が無いのに何を話せばよいのか、と思われるかもしれません。三つで足ります。今期の見込みがどうなりそうか、いま抱えている仕事はどれくらいあるか、来年やろうとしていることは何か。いずれも、社内で分かっていれば、その場で話せることばかりです。資料を新しく作る必要はありません。作らないと行けない、と考えた時点で、訪問の間隔はまた空いていきます。

何をお渡しするかの具体は、金融機関との付き合い方にまとめてあります。借りる・補助を受ける・出資を受けるといった手段の違いから考えたい場合は資金調達の選択肢を、お渡しする計画そのものを整えたい場合は事業計画書は、誰のために書くかをご覧ください。

なお、当社は融資が受けられることをお約束できる立場にはありません。できるのは、お渡しする材料のほうを一緒に整えることです。現在地を言葉と数字にして、どの順で何が要るのかを並べる。そこから先は、相手のあることです。経営・事業診断は、結果をご報告して課題を特定するところまでを無償で承っています。

まずは無料の経営・事業診断から

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