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事業計画書は、誰のために書くか
事業計画書を書き始めるのは、たいてい外へ出す必要ができたときです。申請の締切が近い、あるいは金融機関から求められた。そうして仕上げた一部が、そのまま引き出しに入る。よくある形だと思います。けれども、その計画をいちばん読む必要があるのは、外の誰かではなく、同じ場所で働いている方々です。
計画書が、一種類しかないことがあります
お手元にある計画書を思い浮かべてみてください。それは、誰に読んでもらうために書かれたものでしょうか。多くの場合、答えは「外の誰か」です。提出先が決まっていて、様式があり、締切があった。だから書けた、という順序です。
外へ出すものが要ることは、間違いありません。けれども、それしか無いという状態には、少し気をつけたいところがあります。外向けの計画書は、その相手が判断するために要る材料で組み立てられています。相手が知りたいことと、社内の方が知りたいことは、同じではありません。
そして、外向けのものをそのまま社内へ回しても、たいてい読まれません。言葉づかいが硬く、粒度が粗いためです。読まれなかったことをもって「うちは関心が薄い」と受け取られる場合もありますが、多くはそうではなく、その紙が自分に向けて書かれていないことが、読む側にも分かるからです。
読む人は、三通りおられます
同じ計画から出発しても、読む相手が変われば、前に出すものが変わります。中身を変えるという意味ではありません。どこを厚く書くかが変わる、ということです。
| 読む人 | その人が知りたいこと | そのために厚く書くところ |
|---|---|---|
| 社内の方・継がれる方 | 明日から自分は何をするのか | やること、やらないこと、担当と時期 |
| 金融機関・取引先 | 返せるのか、続くのか | 売上と原価の見通しと、その根拠 |
| 審査に出す先 | 要件に合っているか | 先方の様式に沿った書き方と、必要な添付 |
三つのうち、後の二つは締切があるので、放っておいても書かれます。書かれないまま残るのは、いちばん上の一つです。期限が無く、誰からも求められないからです。けれども、計画が実際に動くかどうかを決めているのは、この一つです。
いちばん上の欄で、右側に「やらないこと」を入れているのには理由があります。何をするかだけを並べた紙は、現場では判断の役に立ちません。迷いが生まれるのは、やることが分からないときではなく、目の前の用件を引き受けてよいかどうか分からないときです。やらないと決めたことが書いてあると、その場で判断がつきます。
数字についても、相手によって役割が変わります。外へ出すときは、その数字がどこから来たのかを説明できることが要ります。社内では、そこまで細かくなくてかまいません。むしろ、どの数字がどうなったら計画を見直すのか、という線のほうが役に立ちます。組み立ての手順そのものは事業計画書の組み立て方にまとめてあります。
一人で書けてしまう計画には、抜けているものがあります
ここが、いちばん申し上げたいところです。計画書を経営者おひとりで書き上げられること自体は、めずらしくありません。頭の中に全体が入っておられるからです。ただ、一人で書ける計画には、一人で見える範囲のことしか入りません。
抜けやすいのは、現場でしか分からない制約です。この時期にその工程は空いていない。その材料は前もって頼んでおかないと間に合わない。あの作業は一人では回せない。こうしたことは、机の上では出てきません。そして、出てこないまま計画に組み込まれたものが、実行の段で止まります。
ですから、書き上げてから見せるのではなく、書いている途中で人を入れるという進め方があります。後を継がれる方、現場を回しておられる方。全部を一緒に書く必要はなく、日程と手順のところだけでも構いません。そこで出てくる「それは無理です」が、いちばん値打ちのある材料です。社外の方に入っていただく場合も同じで、税理士や中小企業診断士といった方々は、数字の置き方と、抜けている前提を見つけるところで力になってくださいます。
もうひとつ、一人で書いた計画は、一人で抱えることになります。進んでいるのか遅れているのかを、他に知っている人がいない。気づいたときには、一年が過ぎています。読む人がいるということは、遅れに気づく人がいるということでもあります。
どう進めるか
新しく書き起こす前に、次の五つを確かめてみてください。
- いまお持ちの計画書が、誰に向けて書かれたものかを言えるか
- 社内の方が読んで、明日からすることが分かる紙が一枚あるか
- そこに「やらないこと」が書いてあるか
- 計画の中身を、経営者以外に説明できる方がおられるか
- どうなったら見直すのか、その線が決まっているか
二つ目が無い場合、まずそこから作られるのがよいと考えています。外向けのものから抜き出して、言葉を平たくして、担当と時期を足すだけで足ります。新しく書き起こす必要はありません。数枚で構いませんし、社内で回すだけのものですから、体裁も要りません。
五つ目は、後から効いてきます。前提は動きます。材料の値段も、人の数も、売り先も変わります。見直す線を決めずに置いておくと、実態と合わなくなった計画が、そのまま残ります。年に一度と決めておくだけでも、古びたまま放置されることは避けられます。
行き先そのものがまだ決まっていない場合は、計画書の前に置くものがあります。10年後の姿を、5つの型から選ぶを先にご覧いただくと、書き出す順序が決めやすくなります。資金の手立てを外に求める場面での話し方は金融機関との付き合い方に、制度と計画のどちらを先に置くかについては補助金は「取る」より「合わせる」にまとめてあります。
当社がお手伝いするときも、様式の話から入ることはしていません。まず、いまどこにおられて、どこへ向かわれるのかを一緒に言葉にします。書けないところが出てきたら、そこが決まっていないところですので、その場で埋めようとせず、印を付けて残します。経営・事業診断は、結果をご報告して課題を特定するところまでを無償で承っています。