支援メニューを、並べずにつなぐ
支援の中身を検討していくと、メニューは自然に増えていきます。相談窓口、専門家の派遣、展示会への出展、販路開拓、設備の支援、後継者の育成。どれも必要なものです。ところが、揃えたのに使われないということが起こります。事業者の側から見たとき、一覧は「自分に関係のあるものを、自分で探す表」に見えています。用意することと、使われることは別の話です。
一覧のままだと、事業者の側から見えないものがあります
支援の一覧を作る側は、全体を知っています。どれがどういう場面のためのもので、どれとどれが続きになっているか。けれども受け取る側は、全体を知らないまま、自分の困りごとから探し始めます。
そのとき、いくつかのことが起こります。ひとつは、自分の困りごとをどの名前で呼べばよいのか分からないという状態です。売上が落ちているという困り方は、商品の問題かもしれず、販路の問題かもしれず、値決めの問題かもしれません。診断がついていない段階では、メニューの名前と自分の状態が結びつきません。
もうひとつは、選び間違えたくないという気持ちです。一度使うと次は使えないのではないか、順番を間違えると損をするのではないか。迷った結果、どれも使わないという選択になることがあります。
三つ目は、一覧に載っていない困りごとの扱いです。載っていなければ、相談してよいのかどうかも分かりません。実際には相談すれば別の形で対応できることが多いのですが、それは一覧からは読み取れません。メニューの組み立て方そのものは支援プログラムの策定に置いています。
入口を一つにして、そこから振り分ける
つなぐための、いちばん単純な方法があります。入口を一つにすることです。困りごとの種類にかかわらず、まずそこへ来ていただき、話を伺ってから中のメニューへ振り分ける形です。
この形の値打ちは、事業者の側に「自分の困りごとを分類する仕事」を負わせないところにあります。分類は、支援する側の都合です。売上の話として来られた方が、伺っていくと工程の属人化が原因だった、ということはよくあります。
下の表は、一覧として置く形と、入口をひとつにする形の違いを並べたものです。
| 一覧として置く | 入口をひとつにする | |
|---|---|---|
| 事業者がすること | 自分の困りごとを分類し、探す | 困っていることを、そのまま話す |
| 合わなかったとき | 制度が合わないと感じて終わる | 別のメニューへ振り替えられる |
| 使われ方の記録 | 件数だけが残る | どんな相談が多いかが残る |
| 次の設計への効き方 | 使われなかった理由が分からない | 足りないメニューが見えてくる |
四行目が、長い目で見ると効いてきます。入口をひとつにしておくと、実際に来た相談の中身が記録として残り、次の年に何を足せばよいかが分かります。一覧のままだと、使われなかったという結果しか残りません。
一つ使って終わり、にしない
もうひとつのつなぎ方は、使った後の受け皿を先に置いておくことです。支援は、一つ使えば終わりというものが多いのですが、実際には使った後にこそ次の課題が出てきます。
たとえば、展示会に出るところまでを支援したとします。出た結果、引き合いが来ます。そこで必要になるのは、注文を受ける体制と、増えた分を作れる体制です。ここが用意されていないと、せっかくの引き合いが断りに変わります。
あるいは、新しい商品を作るところまでを支援したとします。作った後には、どこで売るかという課題が来ます。作るところで支援が切れていると、在庫だけが残ります。
ですから、メニューを組むときに「これを使った先には、次に何が来るか」を並べておくと、つながりが見えてきます。階段のように置くという言い方が近いかもしれません。一段目を上がった方が、二段目の存在を知っている状態にしておく。それだけで、続けて使っていただけるようになります。
準備の要るメニューは、順番を後ろに置くという考え方も、同じところから来ています。いきなり大きな取り組みを置いても、上がれる段が無ければ使われません。
振り分ける人が要ります
入口をひとつにするということは、そこで話を伺って振り分ける役が要るということでもあります。ここが手薄だと、入口が受付だけになり、結局は一覧を渡すのと変わらなくなります。
この役に求められるのは、すべての分野に詳しいことではありません。困りごとを聞いて、どの分野の話なのかを見立て、適した相手につなぐことです。そして、つないだ後に一度戻ってきて、噛み合ったかどうかを確かめること。
域内にその役を担える方がいない場合は、外から補う形になります。そのときに大切なのが、呼ぶ前に「誰に、何を、どこまで」を決めておくことです。決めずに呼ぶと、一度きりの助言で終わります。この点は既存の記事産地に相談できる人がいないときで扱っています。
また、振り分ける役を置くには、産地に何軒あり、どういう状態の先が多いのかを把握しておく必要があります。実態が分かっていないと、見立てが当たりません。数え方は産地振興の体制づくりに置いています。
どう進めるか
次の五つを、いまの支援の形に当てて確かめてみてください。
- 事業者が最初に連絡する先が、一つに決まっているか
- 困りごとを分類する仕事を、事業者の側に負わせていないか
- 一つのメニューを使った後、次に何があるかを説明できるか
- 使われなかったメニューについて、理由が記録に残っているか
- 振り分ける役を、名前で言えるか
四つ目が空欄のままだと、次の年も同じ一覧を並べることになります。使われなかったという結果だけでは、中身が悪かったのか、届いていなかったのか、順番が合っていなかったのかが分かりません。
当社は、支援の中身を外から決める立場にはないと考えています。お力になれるのは、実態を数えるところからご一緒し、メニューを道筋の形へ組み立て、その後の伴走までを設計する部分です。経営・事業診断は、いまの状況を伺って課題を特定し、ご報告するところまでを無償で承っています。ご案内は自治体・関連事業者の方へにまとめています。