支援プログラムを、誰が設計するか
支援プログラムの相談を伺っていると、中身の話から始まることがほとんどです。どんなメニューを揃えるか、どこに力を入れるか。ただ、後から振り返ると、うまく回った取り組みとそうでない取り組みの差は、中身よりも「誰が集まって決めたか」に表れていることが少なくありません。設計の場に誰がいるかは、出来上がるものを静かに決めています。
設計の場に、使う人がいないことがあります
プログラムを組み立てる場に集まるのは、支援する側の方々です。行政のご担当、組合の役員、関係する団体。それぞれ産地のことをよくご存じですが、いま実際に困っておられる事業者の方は、その場にいないことがあります。
いない状態で組み立てると、何が起きるか。支援する側から見て「必要だろう」と思えるものが並びます。それが外れているとは限りません。ただ、優先順位は必ずずれます。支援する側が最も気にしていることと、事業者が今いちばん困っていることは、同じではないからです。
支援したい側と受ける側で立っている場所の前提が違うことについては事業者と行政の間をつなぐに整理しています。この前提のずれは、出来上がったプログラムの使われ方に、そのまま出てきます。
もうひとつ、役員の方に入っていただく場合の注意があります。組合の役員を務めておられる方は、産地のなかでも比較的しっかりされている先であることが多いのです。その方の実感が、産地の平均だとは限りません。いちばん手当てが要る先ほど、役を引き受ける余力がありません。
事業者を、どう設計の側に入れるか
とはいえ、会議に事業者の方を呼べば済むという話でもありません。作る仕事を止めて出てきていただくことになりますし、大勢の前で困りごとを話せる方は多くありません。
現実的なのは、設計の場に入っていただくより先に、設計の材料として事業者の言葉を持ち込むことです。実態調査で伺った内容を、集計した数字だけでなく、そのままの言い方で持ち込む。これだけで場の会話が変わります。
下の表は、事業者の関わり方を段階で並べたものです。上ほど負担が軽く、下ほど濃く関わっていただく形になります。
| 関わり方 | 負担 | 得られるもの |
|---|---|---|
| 聞き取りの内容を、そのまま設計の場へ持ち込む | 軽い(すでに伺ったもの) | 優先順位の手がかり |
| 案ができた段階で、数軒に見ていただく | 短時間で済む | 使いにくい点、言葉の分かりにくさ |
| 試しに使っていただき、後で伺う | 中くらい | 実際に動くかどうか |
| 設計の場に加わっていただく | 重い | 産地の側の当事者意識 |
二行目は、費用も時間もほとんどかからないわりに効きます。案の段階で数軒に見ていただくだけで、使われない理由の多くは事前に見つかります。案内の言葉が伝わらない、申し込みの手間が重い、時期が繁忙期に重なっている。どれも作った後では直しにくいものです。
外の専門家を、いつ呼ぶか
域内に相談できる相手がいない場合、外から補うことになります。このとき、呼ぶ時期によって役割が変わります。
できあがったプログラムに対して助言を求める形であれば、確認の役になります。大きく変えることは難しく、細部の手直しにとどまります。設計の段階から入っていただく形であれば、優先順位そのものを一緒に考えられます。
どちらが良いという話ではありません。ただ、後から呼んで「これでよいか」と伺う形は、噛み合わないことが多くあります。すでに決まっているものに対して、外から言えることは限られるからです。
呼ぶ前に決めておきたいのは、誰に、何を、どこまでお願いするかです。ここが曖昧なまま呼ぶと、一度きりの助言で終わります。この点は専門家の派遣とマッチングに整理しています。当社も、分野ごとに役割を分けた専門家のチームで臨む形をとっており、幅広い分野をつなげられることを強みだと考えています。域内に相談相手がいない場合の補い方については、既存の記事産地に相談できる人がいないときもあわせてご覧ください。
担当が替わっても続く形にする
もうひとつ、設計の段階で決めておきたいことがあります。担当の方が替わったときに、何が残るかです。
産地の取り組みは、年単位で効いてくるものが多くあります。その途中で担当が替わることは、避けられません。そのとき、経緯が引き継がれないと、次の方は最初から組み直すことになります。同じ議論がもう一度行われ、産地の側は同じ話を二度することになります。
残しておきたいのは、決めた内容そのものより、なぜそう決めたかのほうです。どの案を検討して、どれを外したか。外した理由は何だったか。ここが残っていないと、一度外した案が数年後に同じ形で戻ってきます。
そして、決め直す場をあらかじめ置いておくことです。年に一度でよいので、続けるもの、やめるもの、足すものを話す場を作っておく。やめる判断をする場が無いと、メニューは増える一方になります。組み立ての手順は支援プログラムの策定に置いています。
どう進めるか
次の五つを、設計に入る前に確かめてみてください。
- 設計の場に、いま困っている事業者の言葉が持ち込まれているか
- 案の段階で、数軒に見ていただく機会を組んでいるか
- 外の専門家を、確認役ではなく設計から呼べているか
- なぜその案を選び、何を外したかが書き残される形になっているか
- やめる判断をする場が、年のどこかに置かれているか
四つ目と五つ目は、その年の成果には見えないものです。けれども、この二つがあるかないかで、三年後に残っているものが変わります。
そして、設計の前提として、産地の実態が数えられていることが要ります。何軒あり、どういう状態の先が多いのかが分からないまま組み立てると、優先順位を決める根拠が持てません。数え方は産地振興の体制づくりに置いています。
当社は、支援の中身を外から決める立場にはないと考えています。お力になれるのは、まず現在地を確かめ、そのうえでプログラムを組み立て、完了まで伴走するという三段でご一緒することです。経営・事業診断は、いまの状況を伺って課題を特定し、ご報告するところまでを無償で承っています。ご案内は自治体・関連事業者の方へにまとめています。