伝統工芸の事業経営ガイド > 第6章 伝わる発信 > 写真をどう用意するか
写真をどう用意するか

画面の向こうの方は、手に取ることも、重さを確かめることもできません。判断の材料はほとんど写真です。何を撮り、どこを揃え、機材の前に何を決めるかを整理します。
こんな状態にお心当たりはありませんか
- 手元にある写真が、白い背景に品物だけのものばかりである
- 媒体ごとに写真の雰囲気が違い、同じ作り手に見えない
- 作業中の様子を撮ったものが、ほとんど残っていない
- よい機材が無いことを理由に、撮影を先送りしている
使われている時間より、見られている時間のほうが長い
品物は、買っていただいたあと、暮らしの中で長く使われます。けれども買う前の段階では、手に取られることなく、画面の上で何度も見られています。この時間の長さを考えると、写真は品物の添え物ではありません。
そのため写真は、経費というより、売り方そのものへの投資として見るのが実際に近いところです。同じ品物でも、写真の出来ひとつで、届く相手も、受け取られる値打ちも変わります。
単体の写真だけでは、使う場面が伝わりません
背景を落として品物だけを撮った写真は、形と色を正確に伝えます。台帳としては要るものですが、これだけでは「自分の暮らしのどこに置くのか」が浮かびません。買うかどうかは、たいていそこで決まります。
そこで、実際に使われている場面の写真を並べて置きます。食卓の上、床の間、店の棚。その場と品物が馴染んでいることが伝われば、読み手は自分の家や店に置いたところを思い描けます。誰に向けて撮るかは新しい顧客層に向けた商品とも重なる話です。
作っているところも、品物と同じだけ見られます
工程や手元の写真、短い動画は、技そのものに値打ちを感じてくださる方に、いちばん強く届きます。説明の文章を何行も重ねるより、手が動いている一枚のほうが伝わることは少なくありません。
作っておられる方にとっては当たり前の光景です。ですから、意識して残しておかないと、あとから撮り直すことが難しくなります。仕事の記録としての残し方は技を記録するにもまとめています。
| 撮っておくもの | 受け取られること |
|---|---|
| 品物だけを正面から | 形、寸法、色を正確に確かめられる |
| 使われている場面 | 自分の暮らしのどこに置くかが浮かぶ |
| 手元と工程 | どれだけの手数がかかっているか |
| 作り手と仕事場 | 誰から買うことになるのか |
揃えるのは、機材より先に決めごとです
サイト、通販、SNS、紙の資料。それぞれ別々に撮りためていくと、同じ作り手のものに見えなくなります。光の当て方、背景、添える小物。この三つを決めて揃えておくだけで、ばらばらの印象は避けられます。
そして、高価な機材が無いことは、思われているほど障害になりません。窓からの明かりを使い、影の出方を確かめ、水平と余白を整える。この基本を押さえるだけで、見え方はかなり変わります。足りないと感じた時点で、頼む先を探す順序で間に合います。
撮ったものをどう並べ、どの言葉を添えるかはホームページに何を載せるかを、発信の場ごとの使い分けはSNSの選び方と続け方をご覧ください。
よくあるご質問
- 何から撮り始めればよいでしょうか
- いちばんよく売れている品を一つ選び、正面・使っている場面・作っている手元の三通りを撮ってみることをおすすめしています。三通り並べると、いま何が足りていなかったかがはっきりします。すべての品を一度に揃えようとすると、まず終わりません。
- 作業中は手が離せず、撮る余裕がありません
- その日の作業を止めずに残す方法として、決まった場所に据えて回しておく撮り方があります。あとから使える部分だけを切り出す形です。ご家族や、手の空いている方に頼めるようであれば、その時間だけお願いするのも現実的なやり方です。