海外向けの商品開発は、翻訳ではない kogei_ai 2026年9月3日

海外向けの商品開発は、翻訳ではない

海外にも出してみたい。そうお考えになったとき、まず思い浮かぶのは説明書きや値札を外国語にすることかもしれません。ただ、訳したものを持って行っても手に取っていただけなかった、というお話をよく伺います。品物が劣っていたわけではありません。置かれる場所と、使われる場面が変わっているのに、品物のほうが変わっていないためです。訳す作業と、作り直す作業は、別のものです。

訳せば済むと思ってしまうのには、理由があります

国内では、多くを説明せずとも通じてきました。どんな場面で使うものか、どのくらいの格のものか、贈り物にしてよいものかどうか。これらは品物に書かれていたわけではなく、受け取る側が最初から知っていたことです。

その前提が共有されていない相手に対しては、同じ品物が別の意味を持ちます。用途が分からなければ飾り物として見られますし、素材がなじみのないものであれば、扱い方の見当がつきません。足りていないのは言葉ではなく、その言葉が乗るはずだった前提のほうです。だから訳しても届きません。

もうひとつ、訳す作業は始めやすいという事情もあります。誰に頼めばよいかが分かり、費用も見通せ、終わりもはっきりしています。一方で作り直す作業は、どこから手をつけるかが見えにくい。始めやすいほうから手をつけているうちに、肝心の設計が後回しになります。設計の手順そのものはPHASE3 海外向け商品開発に置いています。

前提が違うとは、具体的に何が違うのか

暮らしの前提が違う、と申し上げても抽象的ですので、実際に品物の形に効いてくるところを並べます。下の表は、確かめる順に並べたものです。

確かめること 変わると、品物のどこに効くか
どこに置かれるか(床か、棚か、卓上か) 大きさ、重さ、底の作り、安定のさせ方
どう使われるか(日常か、来客時か、飾りか) 丈夫さ、手入れのしやすさ、数の揃え方
誰が手入れをするか 洗えるか、しまい方、注意書きの要不要
贈り物になるか、自分で使うか 包み、箱、由来の伝え方
どうやって運ばれるか 梱包、割れへの備え、寸法と重量

この五つを確かめると、変えるべきところが自然に絞られてきます。たとえば置かれる場所が卓上に変われば、寸法と重さが先に決まります。寸法が決まると、使える技法と使えない技法が分かれます。そこではじめて、技術の側の話になります。

ここで大事なのは、順番です。技術から考え始めると「この技法でできること」の範囲で発想することになり、置かれる場所の話に戻れません。先に相手の暮らしを置き、後から技術を当てる。ガイドで技術を分解してから活かすものを決めるという順序を置いているのは、そのためです。

変えないものを、先に決めておく

作り直すという話をすると、どこまで変えてよいのかという不安が出てきます。当然のことで、変えてよいものを探すより先に、変えないものを決めておくほうが、話が進みやすくなります。

変えないものは、たいてい二つに分かれます。ひとつは、その品を成り立たせている工程です。これを外すと、名乗れるものではなくなります。もうひとつは、産地として守ってきた基準です。仕上げの水準や、使う材料の質。ここは費用の都合で下げると、後から戻せません。

逆に、変えてよいものは思っているより多くあります。寸法、色、組み合わせ、数、包み方。これらを変えることは、品物を薄めることではありません。むしろ、変えない部分をはっきりさせるほど、変えられる部分を大胆に動かせるようになります。

この線引きは、社内で言葉にしておかれることをおすすめします。人によって線が違うと、試作のたびに議論が振り出しに戻ります。その品がお客様にとって何を意味するかを一文にしておくと、線を引く根拠になります。立て方はコンセプトの立て方にまとめています。

作り直したものを、どこで試すか

設計し直したものは、いきなり海外へ持って行かなくてもかまいません。むしろ、国内で試せる場面があります。日本を訪れた方に手に取っていただく機会です。

当社が海外展開を五つの段階で考え、国内の販路とインバウンドを海外へ出る前に置いているのは、実際に触れて持ち帰っていただいた経験が、そのまま海外での入口になると考えているためです。訪れた方の反応は、その方の暮らしの前提から出てきます。訳した説明が通じたかどうかも、その場で分かります。

試すときに持ち帰るのは、売れた数だけではありません。手に取ってから戻された品はどれか、どこを見て確かめられたか、何を質問されたか。この三つは、次の設計に直接効きます。売れた数だけを記録していると、なぜ売れなかったのかが残りません。

出る前に国内で試すという順序については、既存の記事海外に出る前に、国内で試すで扱っています。あわせてご覧ください。

どう進めるか

次の五つを、いまお持ちの品物ひとつで確かめてみてください。

  • その品が、どこに置かれ、どう使われるかを、相手の暮らしの言葉で言えるか
  • 変えない工程と、守る基準を、社内で同じように言えるか
  • 寸法・重さ・包みのうち、変えられるものはどれか
  • 手入れの仕方を、前提を知らない方に一文で伝えられるか
  • 試した場で、売れた数以外に何を記録するかを決めているか

一つ目で言葉に詰まるようでしたら、そこが出発点です。設計し直す作業は、実のところ、相手を具体的に思い描くところがいちばん重く、残りは手を動かす話になります。

訳す作業そのものが不要だと申し上げているのではありません。設計が決まった後であれば、言葉は品物を支えます。順番が逆になると、訳した言葉だけが宙に浮きます。

当社は、海外へ出れば売れるようになると申し上げる立場ではありません。お力になれるのは、暮らしの前提の違いを一緒に洗い出し、変えるところと変えないところを整理し、試す場を組み立てるところまでです。経営・事業診断は、いまの状況を伺い課題を特定してご報告するところまでを無償で承っています。取り組みのご案内は海外展開サポートにまとめています。

まずは無料の経営・事業診断から

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