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コンセプトの立て方

コンセプトという言葉は、使う人によって指すものが違います。ここでは「その品が、お客様にとって何を意味するか」を一文で言い切ったもの、という置き方で進めます。作るものの説明とは別のものです。
こんな状態にお心当たりはありませんか
- 商品の説明を求められると、材料と作り方の話になってしまう
- 「誰に向けた品か」を聞かれて、答えに詰まったことがある
- 新しい試みのたびに、方向が少しずつ変わっている
- 変えてよいところと、変えてはいけないところの線が曖昧だ
コンセプトは、何を作るかではありません
「◯◯を使った、◯◯のための器」。こう書けたとき、コンセプトが決まったように感じられます。けれどもこれは、作るものの説明です。コンセプトは、その品がお客様にとって何を意味するのかを、一文で言い切ったもののことです。
この違いは、伝える相手が現れたときにはっきりします。作るものの説明は、こちらの都合の順番で並んでいます。意味の説明は、受け取る方の暮らしの側から並んでいます。取引先へ持ち込むとき、店頭で並べていただくとき、後から効いてくるのは後者のほうです。
技術の説明で終わらせない
自社の技術、素材、意匠には、他にない強みがあります。ただ、その強みを言葉にするとき、多くの場合は最初の層で止まります。三つの層に分けて、いちばん外側まで言葉にしておくと、伝わり方が変わります。
| 層 | 言っていること | 受け取る方に伝わるもの |
|---|---|---|
| 技術・素材 | 何を使い、どう作っているか | 手のかかったものだという印象 |
| はたらき | 使うと何ができるか | 自分の暮らしで使えるかどうか |
| 意味 | その方の暮らしで何が変わるか | 選ぶ理由。人に贈る理由 |
下の層が要らないという話ではありません。技術の裏づけがなければ、意味の説明は空々しくなります。順番の問題です。技術から始めて意味で結ぶのか、意味から始めて技術で裏づけるのか。読む方が誰かによって、置き方を選びます。
守るところと、変えるところを先に分ける
受け継いできた意匠や様式のうち、何を守り、何を現代の暮らしに合わせて変えるのか。これを意図せずに進めると、後から戻れなくなります。寸法、色、仕上げ、使う場面。どれを動かしてよいかを先に書き分けておくと、試作の判断が速くなります。
この切り分けは、私たちが外から決められることではありません。何がその技術や様式を成り立たせているのかは、作ってこられた方がいちばんよくご存じです。お力になれるのは、決めたことを言葉として残し、次に迷ったときに戻れる形にしておく部分です。既にある品の見直しについては既存商品を見直すで扱っています。
一人で決めず、すり合わせる
コンセプトを経営者お一人で決めてしまうと、現場で作る手と離れていきます。職人の方、継ぐ方、そして可能であればお客様の声を交えて、すり合わせておくことをお勧めしています。作れないコンセプトは、掲げた時点で形になりません。
また、向ける相手が決まっていないと、すり合わせようにも物差しがありません。誰に向けるかの決め方は市場調査で何を見るかに、その先の届け方は第5章 販路をひらくにまとめています。
よくあるご質問
- コンセプトは、どのくらいの長さで書けばよいですか
- 一文で言い切れる長さを目安にしています。長くなるほど、その場では納得しやすいのですが、後から人に伝わりません。書けたら、社内の方に読んでいただいて、同じ意味で受け取られるかを確かめてみてください。伝わらない箇所が、まだ決まっていない箇所です。
- 技術から考えるのと、使う場面から考えるのでは、どちらがよいのでしょうか
- どちらでも成り立ちます。ただし、調べる順序と確かめることが変わります。技術から入るなら、その技術が活きる場面を探すことになります。場面から入るなら、その場面に合う作り方を選ぶことになり、いまの設備で無理のない範囲かを先に確かめることになります。混ぜずに、どちらから始めたかを書き留めておかれると、試作を見るときの物差しが定まります。