試作と価格の決め方 moribito 2026年9月1日

伝統工芸の事業経営ガイド > 第4章 商品をつくる > 試作と価格の決め方

試作と価格の決め方

試作と価格は、別々の話に見えて地続きです。どこまで手をかけるかが値段を決め、いくらで出すかが作り方を決めます。ここでは、その二つを行き来しながら決めていく順序を置きます。

こんな状態にお心当たりはありませんか

  • 試作にかけた手間が、価格に反映できていない気がする
  • 値段を決めるとき、いつも原価に一定の率を掛けている
  • 試作は仕上がったが、同じものを続けて作れるか分からない
  • 初めての方に手に取っていただける価格帯の品が無い

試作は、一度で仕上げようとしない

一度で完成させようとすると、試作が重くなります。重くなるほど回数が減り、直す機会も減ります。小さく作って、関係する方の反応を得ながら重ねていく。この前提で計画を立てておくほうが、結果として早く決まります。

反応を伺う相手は、社内だけにしないほうが確かです。身内だけで見ていると、判断の物差しが「気に入ったかどうか」に寄っていきます。これまで買ってくださった方、取引のある店の方など、外の目を一度でも通すと、見えていなかったところが出てきます。

価格は、積み上げるだけでは決まりません

原価を積み上げて率を掛ける決め方は、計算としては明快です。ただ、この方法だけで進めると、手をかけた品ほど売りにくい値段になり、手を抜いた品ほど売りやすくなります。積み上げと並べて、もう一方向から見ておく必要があります。

決め方 見るもの 気をつけるところ
原価から積む 材料、手間、時間、経費 技術料が抜けやすい。安く出るほど正しく見える
価値から決める 買う方が感じる値打ち 裏づけがないと、ただ高いだけになる
並んでいる場所から見る 近い用途の品が集まる価格帯 合わせにいくと、選ばれる理由が消える
立ち位置から逆算する どういう作り手として見られたいか 長く保てる位置かどうか

四つのうち、どれか一つを正解にする必要はありません。積み上げた数字を下限として持ち、そのうえで残りの三つから見た値をつき合わせます。離れているときは、値段が間違っているのではなく、作りか、伝え方か、届け先のどれかがまだ決まっていないことが多いものです。

職人の時間を、原価に入れる

原価から抜け落ちやすいのが、作り手ご自身の技術料と時間です。ご自分の手間を数えないまま値段を出すと、その品は作れば作るほど手元に残らなくなります。安く出すことは、次の代へ技を渡すための原資を削ることでもあります。私たちが原価を伺うとき、まずここを確かめています。

そのうえで、価格帯の組み合わせを考えます。手のかかった一点ものだけでは、初めての方が手に取る機会がありません。比較的手に取りやすい価格帯の品を意図して置いておくと、最初の接点が生まれます。そこから、時間をかけて上の価格帯へ移っていただく道すじが作れます。

作れても、続けられない品を避ける

試作の段階から、量産、在庫、納期の見通しを並行して確かめておきます。試作は通ったのに、注文が入ってから納期が守れない。この形が、いちばん傷が深く残ります。作れるかどうかと、続けられるかどうかは別の問いです。

工程のどこに時間がかかり、誰の手が要るのか。ここが読めていないと見通しが立ちません。工程を時間で測る手順は生産管理の第一歩に、在庫と納期の扱いは受発注と在庫の管理にまとめています。

よくあるご質問

いまの値段が適正かどうかを、どう確かめればよいですか
まず、ご自身の時間を入れて原価を出し直してみてください。そこで下限が変わることがあります。そのうえで、近い用途の品が並んでいる場所での価格帯を、上と下で挟んで言えるかを確かめます。この二つが出そろって初めて、いまの値段が高いのか安いのかを判断できる状態になります。相場そのものは品目によって大きく違いますので、実際の品を拝見してからご一緒に見ていきます。
値上げをお願いすると、取引先が離れないか心配です
理由を添えずに数字だけをお伝えすると、そうなりやすくなります。何が上がったのか、その品を続けるために何が要るのかを、誠実にお伝えするところから始めてみてください。原材料の値上がりに向き合うときの選択肢は第7章 原材料と調達で扱っています。

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