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従業員が継ぐ

長く一緒に働いてこられた方は、仕事の中身をいちばんよくご存じです。それでも承継の相手として名前が挙がりにくいのには理由があります。ここでは、その理由と、越え方の順序を置きます。
こんな状態にお心当たりはありませんか
- 任せられる方はいるが、資金の話になると止まってしまう
- 仕事は任せているが、値決めと支払いはご自身が握ったままである
- 継ぐ意思があるかどうかを、ご本人に伺ったことがない
- 取引先や金融機関へ、いつどうお伝えするか決めていない
候補から外していないか、まず確かめる
ご親族に継ぐ方がいないと分かった時点で、承継の話そのものが終わってしまうことがあります。けれども、渡す相手として考えられるのはご親族だけではありません。意思を確かめる前に、こちらの側で候補から外してしまっている場合があります。
三つの道の並べ方は、コラム事業承継の選択肢は、親族内だけではないで扱っています。ここでは、社内の方へ渡すと決めた後に出てくる二つの壁を、順に見ていきます。
いちばんの壁は、資金です
社内の方への承継で最も多く行き止まりになるのが、資金です。会社の持分を引き受けるには、その分の資金が要ります。長く働いてこられた方であっても、そこを個人で用意できるとは限りません。意思の問題として扱っているうちに、実は資金の問題だったということがあります。
この部分は、ご本人とお二人だけで抱えるところではありません。承継を目的とした資金の借り入れには、公的な保証の仕組みを含めて、いくつかの道が用意されています。取引のある金融機関や支援機関へ早めに相談し、どういう道があるのかを先に知っておくところから始めていただくのがよいと考えています。
資金の側からの整理は第9章 資金と補助金で扱います。制度の中身は変わることがありますので、実際に検討される際は、そのときの取り扱いを支援機関や専門の方にお確かめください。
権限は、承継の前から少しずつ移す
もうひとつの壁は、経営の経験です。工程を任されてきた方でも、値段を決める、仕入先と交渉する、支払いの見通しを立てるといった判断は、経験していないことがあります。渡した日から急にできるようになるものではありません。
ですから、承継の日を待たずに、判断の場を少しずつ移していきます。どの判断を、いつから、どこまで任せるか。これを決めておくと、任せた側も引き受けた側も、迷わずに済みます。
| 移す順 | 任せる判断 | 確かめること |
|---|---|---|
| はじめ | 仕入れの発注、納期の回答 | 数字を見て決めているか |
| 次に | 値決め、見積もりの提示 | 原価の中身を説明できるか |
| 最後に | 設備投資、借り入れ、取引先との条件 | 判断の理由を言葉にできるか |
技術と経営は、別の時間割で進む
技術の承継には年単位の時間がかかりますが、経営の移し方はもっと短い期間で組み立てられます。同じ時間割に乗せようとすると、どちらも中途半端になります。二つを別々に引いておくと、いつまでに何を終えるかが見えてきます。それぞれの教え方と進め方は後継者を育てるで扱います。
渡した後の形も、先に決めておきたいところです。先代が相談役として残る形をとると、取引先や金融機関から見たときの安心につながります。ただし、どの判断はもう引き受けないのかを決めておかないと、渡した意味が薄くなります。残るのであれば、残る範囲を先に言葉にしておきます。
よくあるご質問
- 本人にその気があるか分かりません。先に資金の道を調べたほうがよいですか
- 先に調べておかれることをおすすめしています。意思を伺ったときに「資金が用意できない」と返ってくることがよくあるためです。どういう道があるかを示せる状態で伺うと、話は具体的なところから始まります。
- ほかの従業員との関係が心配です
- ご心配はもっともです。誰に渡すかを決めた理由と、渡した後にそれぞれの方の仕事がどうなるのかを、順番を決めてお伝えする形をとります。取引先への伝え方とあわせて、いつ誰に何をお伝えするかを一覧にしておくと、行き違いが減ります。