価格交渉の考え方 moribito 2026年9月1日

伝統工芸の事業経営ガイド > 第7章 原材料と調達 > 価格交渉の考え方

価格交渉の考え方

交渉を、その場の値段を動かす勝負として捉えると、勝っても次の年にまた同じ勝負が始まります。ここでは、続けられる取引条件をつくるための組み立て方を置きます。

こんな状態にお心当たりはありませんか

  • 長く同じ条件のまま取引していて、見直したことがない
  • 仕入先が一社だけで、比べる相手がいない
  • 値段の話は毎回するが、話した中身が残っていない
  • 値下げを求められたとき、応じるか断るかしか浮かばない

値段を動かす場ではなく、条件をつくる場です

交渉を「どちらがどれだけ譲るか」として捉えると、譲った側に不満が残ります。不満の残る条件は、続きません。翌年また同じ話になるか、静かに取引そのものが細っていきます。

ですから、置きたいのは値段そのものではなく、双方が来年も続けられる条件です。相手にとっても、こちらが安定して発注してくれることには値打ちがあります。その値打ちを見えるようにするのが、交渉の中身になります。

この考え方は、仕入先との話でも、お客様から値下げを求められる場面でも同じです。売る側として単価の改定をお願いするときの順序は、コラム原材料が上がったとき、値上げの前にに置いています。

価格のほかに差し出せるものを、言葉にしておく

交渉の場に持っていけるのは、値段だけではありません。相手が受け取るものを整理しておくと、値段以外の点で折り合える幅が生まれます。

差し出せるもの 相手にとっての値打ち
年間の使用量の見通し 生産と在庫の計画が立てやすくなる
発注の時期をまとめる まとまった単位で動かせる
支払いを早める 資金の回りがよくなる
規格の幅を広げる 使える材料の範囲が増える

四つ目は見落とされやすいところです。等級や寸法の条件を少し緩めるだけで、相手が扱える材料は増えます。ただし、品物の質に関わる部分を緩めてはいけません。どこまでなら緩めてよいかは、作る側の判断です。

逆に、こちらが売る側として求められたときも同じです。値段を下げる代わりに何を受け取るのか。数量なのか、時期なのか、支払いなのか。こちらが値段の話しかしなければ、相手も値段でしか答えられません。

比べる相手がいないと、条件は動きません

交渉の力は、話し方よりも、ほかに選べる先があるかどうかから来ます。一社に頼りきりの状態では、こちらから条件を持ちかけにくくなります。切り替えるためではなく、比べられる状態を保つために、候補を知っておきます。

探し方と、切り替えるかどうかの判断は仕入先を新しく開拓するで扱います。使う量が少なくて条件を持ちかけにくい場合は、共同購買という手のほうが先に効くことがあります。

話した中身を、次の年へ残す

交渉のたびに、前回何をどう決めたかを思い出すところから始めていないでしょうか。その年の担当者が代わると、経緯ごと消えます。残しておくのは、紙一枚で足ります。

書いておくのは、いつ、誰と、どの条件を、どういう理由で決めたか。とくに「今回は見送った理由」は、次の交渉でそのまま使えます。断られた条件を翌年もう一度出すのか、別の形にするのかを、記憶ではなく記録で判断していただけます。

この記録は、承継の場面でも効いてきます。取引の条件が経営者の頭の中にしかない状態は、渡すときにいちばん困るところです。残し方の考え方は技を記録すると同じです。

よくあるご質問

長い付き合いの仕入先に、条件の話を持ちかけにくいのですが
値下げのお願いとしてではなく、来年以降の見通しをお伝えする場として持ちかける形があります。年間どれくらい使う予定かをお渡しするだけでも、相手は支度がしやすくなります。そのうえで、まとめて発注する代わりに条件をご相談する、という順序であれば、関係を損なわずに進めやすくなります。
値下げを求められました。断ると取引が無くなりそうです
応じるか断るかの二つだけで考えると、どちらも苦しくなります。数量、納期の幅、支払いの時期など、値段以外で動かせるところを一緒に並べてご相談されることをおすすめしています。そのうえで、その取引が採算に乗っているかどうかは先に確かめておく必要があります。原価の見方は試作と価格の決め方で扱っています。

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