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原材料が値上がりしたときの選択肢

値上がりの知らせが届いてから考え始めると、選べる手はほとんど残っていません。ここでは、上がる前に決めておけることと、上がったときに何を見直す機会と捉えるかを置きます。
こんな状態にお心当たりはありませんか
- 仕入れ単価がいつからいくら上がったのか、すぐに答えられない
- 値上がりのたびに、そのつど対応を考えている
- 価格を上げたいが、離れていくお客様が心配で踏み切れない
- 職人の手間が、原価にどう入っているか整理していない
上がってから考えると、選べる手が減ります
値上がりへの手当ては、単価の改定だけではありません。使う量を見直す、工程を整える、代わりの材料を検討する、同じ材料を使う先と量をまとめる。どれも効き始めるまでの時間が違うため、上がってから並べても、間に合うものと間に合わないものが出ます。
値上げの前に打てる手の使い分けと、値上げを伝えるときの順番については、コラム原材料が上がったとき、値上げの前にで詳しく扱っています。ここでは繰り返さず、上がる前に決めておけることのほうを置きます。
もうひとつ、先に確かめておきたいことがあります。その値上がりが自社の買い方によるものか、材料そのものを作る方が減っているのか、という切り分けです。後者であれば、一社で交渉を重ねても元には戻りません。見分け方は原材料の脆さは、産地ひとつでは解けないにあります。
「どこまで上がったら見直すか」を先に決めておく
その場その場で判断していると、上げるかどうかの議論から始まります。あらかじめ基準を決めておくと、議論は「上げるか」ではなく「どう伝えるか」から始められます。決めておくのは、次の三つで足ります。
| 決めておくこと | 中身 |
|---|---|
| 見る周期 | 主な材料の単価を、いつ確かめるか(年に何回か) |
| 動く目安 | 前回からどれだけ上がったら、価格の見直しに入るか |
| 見る範囲 | 材料だけか、燃料や輸送、外注の工賃まで含めるか |
目安の数字そのものは、品目によっても、利益の厚みによっても変わります。大切なのは数字の正しさではなく、決めてあることのほうです。決まっていれば、上がったときに立ち止まる時間が要りません。
あわせて、直近数年の仕入れ単価を書き出しておきます。手元にこの推移があると、取引先へお伝えするときにも、金融機関に事情を説明するときにも、そのまま使えます。
転嫁できるかどうかは、選ばれ方で決まります
値上がり分を価格へ反映できるかどうかは、交渉の巧みさよりも、その品物が価格で選ばれているのか、価値で選ばれているのかにかかっています。価格で比べられている品物は、上げた分だけ離れられます。
ですから、値上げが通りにくいと感じられる場合、問題は値上げの伝え方ではなく、選ばれ方の側にあることがあります。何をもって選んでいただいているのかを言葉にする作業は、コンセプトの立て方や第6章 伝わる発信と地続きです。
お伝えするときは、理由を添えます。材料が上がったこと、そして技を続けるための費用であること。この二つを誠実にお伝えするかどうかで、受け取られ方は変わります。黙って上げるより、事情をお話しするほうが、長い取引では残ります。
値上がりは、原価を数え直す機会でもあります
単価が動いたときは、原価の中身を見直すのに向いた時期です。とくに確かめたいのが、職人の技術料と時間が、正しく原価に入っているかです。ここが抜けたまま利益を計算していると、上げても手元に残りません。
材料が上がったから値上げをする、という理由だけで動くと、もともと足りていなかった部分は足りないままになります。値づけそのものの考え方は試作と価格の決め方で扱っています。
使う量の側も、同じ機会に見ておきます。工程の途中で失われている量を一度数えると、単価が動かなくても総額が下がることがあります。値段のほうは相手の事情で動きますが、量のほうは自社の工程で減らせます。
よくあるご質問
- 取引先から値上げの通知が来ました。まず何を確かめればよいですか
- 上がったのが単価だけなのか、入手できる量や時期まで変わったのかを先に伺うことをおすすめしています。量と時期まで動いているのなら、確かめる順序が変わります。値段より先に、来年も同じ品を同じやり方で作れるのかどうかを伺ってください。安くしていただけたとしても、入らない材料では作れません。
- 値上げをお願いすると、取引を切られないか心配です
- ご心配はもっともです。一律に同じ率で、同じ日から、というやり方はいちばん失いたくない相手から反応が返ってきます。取引の大きい相手ほど早く、個別にお話しする順番をおすすめしています。伝え方の順序はコラム原材料が上がったとき、値上げの前にに置いています。